絶縁した毒親が生活保護を申請した!子供に親の扶養義務はある?

もし、あなたに絶縁した毒親がいるとします。
かれこれ、10年ほど音信不通。
にもかかわらず、ある日あなたの郵便受けに茶封筒が届いて、開封してみると、それは福祉センターからのもの。そして、手紙には、以下のような記載がありました。
「あなたの父が生活保護を受給しており、あなたには扶養義務があります。どれだけ援助ができるか、所得を証明できるものを提出してください」
毒親だからこそ、10年間も絶縁している。にもかかわらず、子どもだからという理由で、親の扶養義務が発生してしまうのでしょうか?
子どもというだけで、勤務先や銀行口座まで調べられてしまうのでしょうか?
絶縁した毒親の生活保護の申請に対して子供の扶養義務はない!

絶縁した親の生活保護の申請に対して、子どもは扶養義務はありません。
事情があるなら断れるということです。
確かに、民法877条1項では、子どもの親に対する義務として「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。
- 「直系血族」・・・「自分を中心として、父や母、祖父母など直接さかのぼっていく場合と、子どもや孫、ひ孫など直接下っていく場合の親族」のこと。
これが「自分(成人を前提とします)の親及び兄弟姉妹に対する扶養義務(面倒を見る義務)」の根拠となっています。
ですが、
「自分の親及び兄弟姉妹に対する扶養義務」とは、以下のようなことです。
- 扶養義務・・・扶養義務のある者が、自分(配偶者・子がいる場合はそれらも含みます)の社会的地位、収入等に相応した生活をしたうえで、余力のある範囲で、生活に困窮する親族を扶養する義務
つまり、自分の親や兄弟姉妹に対する扶養義務は、あくまで「余力のある範囲」が前提なので、「自分の生活を犠牲にしてでもすべての面倒を見る義務」ではないのです。
「自分の生活をするだけで精いっぱい、余力がない」
という場合には、「自分の親及び兄弟姉妹に対する扶養義務」は認められませんので安心してください。
法律上では金銭的余裕が場合のみ親族に扶養義務が課せられる

扶養義務は大きく2つに分けられます。
それは、「生活保持義務」と「生活扶養義務」です。
「生活保持義務」は、夫婦間、または親が未成熟の子に対する親からのもので、生活保持の義務を負うものです。
「生活扶養義務」は、夫婦同士や、未成熟の子に対して以外の親族に対する義務です。
そして、以下のように解釈されています。
- 『生活保持義務』・・・自分と同程度の生活ができる程度まで援助する義務
- 『生活扶助義務』・・・自身の余力の範囲で援助することまでしか期待されないもの
義務の強さは以下のような関係となります。
『生活保持義務』>『生活扶助義務』
親との関係は、強い義務である「生活保持義務」のある関係ではなく、「生活扶助義務」の関係です。
だからこそ、ある程度、金銭的に余裕がある場合などのケースは別ですが、それ以外は、絶対扶養しなければいけないというわけではありません。
絶縁した毒親が生活保護の申請をした場合はどうなる?

次に、絶縁した毒親が、生活保護の申請をするとどうなるのでしょう。
以下がまず考えられます。
- 毒親は貯金をすべて使い切ることになる
- 毒親は資産をすべて売却することになる
- 親族に福祉事務所から毒親の扶養要請が来る
なぜ、これらが考えられるのでしょうか。
そもそも、生活保護とは、経済的な理由から生活が困窮している人に対し、「生活保護費」を支給し最低限の生活を保障する制度。
そのため受給するためには、経済的な困窮に陥る状況になっていることを客観的に示す必要があります。
要件としては、世帯員全員が、利用し得る
- 資産
- 扶養義務者の扶養
- 能力
- その他あらゆるもの
の4つを活用しても、なお厚生労働大臣基準の生活費に満たないという状況であれば生活保護を受けることができます。
詳しく解説していきます。
①毒親は貯金をすべて使い切ることになる
生活保護を申請するということは、生活していくためのお金がないということです。
生活保護の申請時に、世帯の貯金額の合計が
最低生活費を超えている場合は申請しても、
生活保護は受給できません。
「まずは貯金を崩して生活しなさい」
と言われてしまいます。
- 最低生活費とは・・・世帯の人数や年齢などをもとに、国が決めた基準で計算した1か月の生活費のこと
- 収入とは・・・年金・手当・給料(子どものアルバイト収入や金券等の現物給付も含む)・仕送り・保険金・その他の臨時収入など、世帯の全員が得たすべての収入を合計したもの
では、貯金が0円にならないと、生活保護の申請はできないのでしょうか?
そこまでではなく、正確には、 生活保護の対象になる範囲の貯金額は、世帯の最低生活費の半額が目安と言われています。
ですが、その半額を超える貯金がある場合は、まずはそれを生活費にするなどして、なくさないと、生活保護の申請はできません。
②毒親は資産をすべて売却することになる
生活保護を受給するためには、資産がある場合は、売却して生活資金に充てることが原則です。
また、生活保護の受給するためには、既に経済的自立のためにあらゆる努力をしつくした状態であることが求められます。
その努力の中に「資産を活用すること」があります。
- 保有する現金や預貯金は活用する
- 貴金属、有価証券などは処分し生活費にあてる
- 生命保険に加入している場合は、原則解約し返戻金を活用する
- 社会保障制度(各種年金、労災保険、介護保険、障害者総合支援法 など)を活用する
- 自動車、利用していない土地、家屋などは原則として売却し生活費 にあてる
たとえば、持ち家の住宅ローンがまだ残っている家に住んでいる方は、生活保護を受けることができません。
なぜなら、生活保護を認めてしまうと、生活保護費によって住宅ローン返済をすることで資産を増やすことになってしまうからです。
一部の例外を除き、生活保護を受給するためには、資産がある場合は、すべて売却して生活資金に充てることが原則です。
例外)
持ち家があるから生活保護は絶対に受給できない、というわけでもないので注意が必要です(逆に、地価の高い場所にある持ち家は売却する必要があります)
③親族に福祉事務所から毒親の扶養要請が来る
生活保護を申請すると、申請者が扶養義務者の扶養を受けれるかどうか、福祉事務所が生活保護申請者の家族に対して、扶養照会を行います。
- 扶養照会とは・・・扶養照会は、生活保護を申請しようとする人や、生活保護で暮らしている人の3親等内の親族に対して行われる「援助できませんか?」という問い合わせのこと
照会書は、茶色い封筒で届くのが一般的です。
また、照会書の書式は、厚生労働省の示した様式に沿って家族構成や職業、資産、収入、社会保険の加入状況等を記載するものとなっているようです。
ちなみに、もし、金銭的援助が可能な親族がいる場合は、申請者に仕送りが行われるので、行政からの生活保護費はそのぶんを差し引かれます。
申請者にとっては、受け取る生活費は変わりません。行政にとっては、保護費を減らせるという利点があります。
福祉事務所からの扶養要請に対して回答義務はない

毒親ゆえに縁を切って、連絡を取っていないにも関わらず、その毒親が生活保護申請した場合に、扶養照会が来てしまうのは、決して気持ちの良いものではないですよね。
扶養照会は、あくまで福祉事務所からの生活保護申請者の親族に対してのお願いにあたるものですので、回答義務はありません。
福祉事務所が、あくまで任意の協力を求めるものに過ぎないので、応じなければならない法律的な義務もありません。同時に、放置しても責任を問われることはないです。
また、扶養義務者間の協議や裁判所の判断無しに、福祉事務所から扶養義務を負わされることもないので、心配はいりません。
扶養照会に返送しなければ福祉事務所から金融機関や官公署に資産調査がされる事があるようですが(生活保護法第29条参照)、その調査結果により扶養しなければならなくなることもなく、実際に扶養する余裕がないのであれば問題はないです。
参考:法律上では毒親と絶縁することはできない

毒親の生活保護申請の結果、扶養照会の通知などが来ると、いっそ、こういった書類が届かないよう、毒親と縁を切ってしまいたい、と思うかもしれません。
まとめ:絶縁した毒親が生活保護申請をしても子供は関係ない
毒親との縁を、法律的になしにすることはできません。
ですがそれは法律上の話です。
扶養したくなければ、扶養照会で届いた書類に、扶養するほどの余裕がないと回答し、絶縁した毒親とは遠い距離を保ち続けましょう。
扶養照会は、あくまで福祉事務所からの「援助ができるならしてください」というお願いに過ぎません。事情があるなら、正々堂々断りましょう。
絶縁した毒親が生活保護申請をしても子どもは関係ありませんから、安心してください。
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