医療費控除の対象者とは?別居の家族や年金受給者は含まれる?

医療費控除の対象者とは?別居の家族や年金受給者は含まれる?
医療費控除を申告したいが、自分が医療費控除の対象者か分からない人も多いのではないでしょうか。この記事では、医療費控除の対象者を紹介しています。医療費控除の対象となる医療費や、医療費控除を申告する際の注意点も解説しているので、ぜひお読みください。
監修者「谷川 昌平」

監修者谷川 昌平ファイナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!

医療費控除の対象者とは?別居の家族や年金受給者は含まれる?

こんにちは。マネーキャリアの谷川です。 

先日、40代の女性の方からこんな疑問を寄せられました。 


先日、実家に住んでいる母ががんになってしまって、治療費が結構かかったのよね…医療費控除ってのがあるのは聞いたんだけど、同居していない家族は対象者になるのかな?


ここでは、

  • 医療費控除の対象者
  • 医療費控除の対象になる医療費
  • 医療費控除の確定申告方法

など、医療費控除とその対象者や税制、また確定申告まで分かる記事になっています。ぜひ最後までご覧ください。 


マネーキャリアでは、お金に関する記事が数多くありますので興味のある方は合わせてご覧ください。 

医療費控除の対象者は所得額で異なる!還付金はいくら?

医療費控除の対象者は、所得額で決まります。


還付金の金額も所得額により異なり、控除が

「一定の額を差し引く」


という意味である通り、税金を沢山納めている人(=高所得者)であるほど、控除による還付金も多くなります。


詳しい分類や計算方法も解説していきますので、自分の所得額と照らし合わせて計算してみてください。


なお、ここでの所得額とは「給与所得控除後の金額」を言います。

源泉徴収票に記載されていますので確認してみましょう。


年収とは全く別ですので、勘違いしないように!

対象者①所得が200万円以上で医療費を10万円以上支払った人

まずは、所得額200万円以上の方。

年収300万円以上であれば、ここに該当しているはずです。


医療費控除の計算は下記の通りになります。

実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円

(参照:国税庁ホームページ)


仮に保険金が全くなかったとしても、年間10万円以上の医療費を支払わないと医療費控除の対象額は0円以下になってしまいます。


そのため、「年10万円以上医療費を払った人」が対象者に該当します。


補足:還付金の計算方法

医療費控除の計算と、実際に還付金として受け取れる額の計算は異なります。

還付金=医療費控除額×(所得税率+住民税率10%)

住民税率は10%で一定です。


所得税率は「課税される所得金額」により分類されます。

※課税される所得金額=給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計額


課税される所得金額税率
1,949,000円まで5%
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%

課税される所得金額についても源泉徴収票があれば分かります。

平均年収に満たない方は、大半が税率5%に該当します。


下記に計算例も記載しますので、参考にしてください。


<計算例>

・年収400万円

・課税される所得金額170万円

・かかった医療費20万円

・受け取った保険金0円


の場合、

医療費控除の額=20-10=10万円

還付金=10×15%=1.5万円

対象者②所得が200万円未満で医療費を所得の5%以上支払った人

所得200万円未満の方は、少し計算が変わります。

実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-所得額の5%

200万円以上の方と異なるのは、医療費が10万円未満でも所得の5%以上を支払った場合は対象者となる点です。


よく一般的に言われている「10万円以上の医療費なら医療費控除が受けられる」というのは、半分正解ですが半分間違いでもあります。


還付金の計算については下記の通りです。


<計算例>

・年収290万円

・課税される所得金額120万円

・かかった医療費9万円

・受け取った保険金0円


の場合、

医療費控除の額=9×5%=4500円

還付金=4500×15%=675円


かなり金額は少なくなりますが、そもそも20~40代前後の方は普段ほとんど病院に行かないのに保険料を毎月1万円~数万円負担させられています。


ほんの少しでも返してもらえなければ割に合いません。

国が認めた制度ですので、積極的に使いましょう。


使わなくても税務署は何も言ってきませんので、使わなくて得をするのは国です。

年金受給者も確定申告をすることで医療費控除を利用できる!


医療費控除は、年金受給者も利用することができます。

ただし、以下2点に該当する方は、医療費控除を受ける意味はありません。

  • 非課税の年金(障害年金・遺族年金)受給者
  • 年金以外に所得がない方
上記に該当する方は、税制上の所得が0円。
そのため、控除する税金がそもそもないのです。

それ以外の一般的な老齢年金については、確定申告をすることで医療費控除を受けられます。

ただ、これに関しても税制上の所得がない場合は、控除される税金がないことになり意味がありません。意味があるのは、
  • 65歳以上の方:年金受給が年110万円以上
  • 65歳未満の方:年金受給が年60万円以上
となります。

これは、年金にも「公的年金控除」が適用され、その分は課税の対象にならない所得になるからです。

医療費控除の対象となる医療費は?

上記の対象者に該当する方でも、何でもかんでも医療費控除が認められるわけではありません。


一口に医療費と言っても、中身は様々です。

  • 治療目的
  • 美容目的
  • その他治療以外目的
この中で医療費控除の対象になる医療費とは何でしょうか。
解説していきます。

①治療目的の医療費が医療費控除の対象となる

原則として、「治療目的の医療費+医療費に付随する治療に必要な費用」が医療費控除の対象です。


そのため、通常の通院、入院費用のほかに、通院時に利用した公共交通機関の交通費も対象になります。

詳細は後述しますが、市販の医薬品も一部医療費控除に該当します。

②その年の1月1日から12月31日の間に支払っている必要がある

医療費控除は、確定申告時に申し出るものです。

そのため、確定申告する年の1月1日~12月31日に支払っている必要があります。


年をまたいでいる場合は、年ごとに支払った医療費を計算した上で、来年の医療費控除に回さなければいけません。


これは、仮に医療費が確定していた場合でも同様で、


「来年だと医療費控除できるかどうか分からないから今年に入れてしまえ」


などという都合のいい計算は許されません。

③生計を一にしている家族等の医療費も含めることができる

医療費控除は、自分が払った医療費に限りません。

国税庁ホームページにも記載がありますが、


「自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費」


なら医療費控除に含めることができます。


そのため、自分以外の人も対象者になり得ます。

同居している親族や、扶養に入っている親族等も対象者になるのです。


これは、生計を一にしているのであれば、例え自分の医療費でなくても

「自分の所得から出した医療費」に変わりはないからです。

医療費控除を申告する際の注意点


ここまでで、医療費控除の対象者についてはある程度イメージがついたと思います。


ここからは、実際に医療費控除を確定申告する際の注意点も解説しておきます。


意外と見落としやすい部分ですので、要チェックです!

①「生計を一にしている」とは扶養や同居しているかは関係ない

少々分かりづらいのが、医療費控除の対象者である「生計を一にしている」という条件。


字面だけをとると、扶養に入っているか同居していないとダメなのでは?

と思われますが、実際には扶養の有無、同居の有無は関係ありません。


現況として「生計を一にしている」とみなされればOKです。

例えば、以下の場合でも生計を一にしているとみなされます。

  • 別居の未婚の子に対して仕送りを続ける親が医療費を負担した場合
  • 別居の親に仕送りを常に行っていた子が、親の医療費を負担した場合
ただしこの場合、万が一税務署から調査が入った場合に、仕送りを続けていることの証明(銀行口座の送金など)がないと突っ込まれる可能性は否定できません。

仕送りなどはちゃんと証拠を残しておくようにしましょう。

②国民健康保険の対象と家用費控除の対象は同じではない

難病治療の際に関係するのが、保険適用内の治療かどうか。

選択に迷われた方もいると思います。


日本の健康保険は、保険適用外の治療(自由診療)を受ける際は10割負担、すなわち保険の対象になり得ません。


ここで「保険適用外=医療費控除の対象外」と考えてしまう方がいますが、全く別と考えてください。


医療費控除とは、保険の有無を問わず「治療に必要な費用」であれば適用されます。

そのため、保険適用外の治療を受けた際は医療費控除の金額も大きくなります。


知らないと余計な税金を負担することになるので、絶対に覚えておきましょう。

③交通費や市販薬も医療費控除の対象に含まれる

前述で保険の有無が関係ないように、一見すると医療費に関係なさそうなものでも医療費控除の対象になり得ます。

  • 通院のための交通費(公共交通機関が使えなかった場合はタクシーも〇)
  • 薬局で購入した市販の風邪薬
  • 子供の歯列矯正(嚙み合わせを矯正する目的のもの)
  • 松葉杖など、治療に必要な器具
  • 治療として支払ったマッサージ費
  • 介護保険内の介護サービス
このように、割と広い範囲で医療費控除は認められます。

親の介護をしている場合などは、思いがけず医療費控除の対象となる費用が出る場合もあるので、領収書など医療サービスを受けたことを証明するものは取っておくようにしましょう。

医療費控除に必要な書類と申告方法を紹介!


ここで、医療費控除を申告する際に必要な書類と、申告方法も解説していきます。


準備さえしておけば年1回で済む作業ですので、面倒くさがらずに取り組みましょう。

①医療費控除に必要書類

まずは必要書類。

簡単にまとめると以下4点です。

  1. 確定申告書 
  2. 医療費控除の明細書 
  3. 源泉徴収票 
  4. マイナンバーの記載
詳細は順番に解説します。

1.確定申告書

確定申告書にはA表、B表の二種類がありますが、給与所得や年金所得しかない方はA表で十分です。
税務署で書類を貰って手書きでも構いませんが、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成すると簡単です。

2.医療費控除の明細書

近年、領収書に代わって提出が求められるようになった書類です。ただ、領収書5年間の保管義務がありますので、大事にしまっておきましょう。
明細書は領収書に従って記載していくだけですので、さほど難しくありません。

確定申告書と同様、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から作成することができます。

3.源泉徴収票

会社員や公務員の場合、既に税の申告は終わっていることになっています。
これを源泉徴収と言います。

一部誤差が生まれれるので、その際は年末調整にて調整していく方式です。
ここには生命保険控除などの過半の控除を含めることができますが、医療費控除は年末調整に含めることができません。

もちろん、改めて確定申告しなおせば良いのですが、その際に会社から貰った給与を確定申告書に記載する必要があります。
そのため、源泉徴収票がなければ申告できません。

万が一捨ててしまった方がいたら、会社に「医療費控除を申請したいので再発行お願いします」と言えば、再発行してくれるはずです。

4.マイナンバーの記載

マイナンバーについては、
  • 通知カードをお持ちの方
  • マイナンバーカード発行済の方
の2パターンに分かれます。
このうち、確定申告が楽なのは圧倒的にマイナンバーカード発行済の方です。

e-TAXという国税庁のサービスを利用し、ネット上だけで完結することができます。
ただし、ネット上だけで完結させるためには、マイナンバーカード読み取り対応スマホorマイナンバー対応カードリーダーが必要です。

マイナンバー通知カードの方も、税務署に行ってIDとパスワードを発行してもらえば、e-TAXを利用できます。

②医療費控除の申告方法

医療費控除の申告は、前述の「2.医療費控除の明細書」に記載して確定申告書に添付するだけです。


書き方に悩む方は国税庁の「医療費集計フォーム」をダウンロードし、Excelでまとめてみましょう。

最低限、以下のものがあれば何とかなります。

  • 実際に支払った医療費の領収書
  • 補填として受け取った保険金の証明
複数人、複数の病院などから医療費控除を受ける場合は、同じ人、同じ病院ごとにまとめて記載することもできます。

Excelでまとめて同じデータごとにまとめなおして計算すれば、明細書もスムーズに記載できるはずです。

そこまで難しく考える必要はなく、
  • 所得額200万円以上:実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円
  • 所得額200万円未満:実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-所得額の5%
で簡単に計算できることを、国税庁が書類で小難しくしているだけです。

医療費控除とは異なるセルフメディケーション税制とは?

医療費控除の話から逸れますが、セルフメディケーション税制という仕組みもあります。


これは平成29年より導入された制度で、国民の健康増進のために医療費控除の特例として利用できる所得控除制度です。


はじめに断っておきますが、あくまで特例ですので医療費控除との併用はできません。

基本的に、医療費控除が該当する方は医療費控除の方が還付金は多くなるので、セルフメディケーション税制を使う必要はありません。


ただ、以下の方はセルフメディケーション税制を使うメリットがあります。

  • 病院に行かない代わりに薬局で医薬品を買うことが多い
  • 医師から処方される薬と同等の成分が入っている医薬品を買っている
  • 医薬品を年間12,000円以上買っている
セルフメディケーション税制を使うための条件は下記の通りです。
  1. 対象医薬品を購入していること(対象品目リスト)
  2. 1の購入額が年間12,000円以上であること(上限88,000円)
対象医薬品の例としては、
  • 風邪薬
  • 胃腸薬
  • 鼻炎用内服薬
  • 水虫用の薬
  • 腰痛・肩こり・関節痛の貼付薬
などが該当するようですが、全て該当するわけではないので品目リストをチェックしてください。

セルフメディケーション税制の控除額の計算は、「対象品目購入額-12,000円」です。
実際に還付金を受けられる金額は、「控除額×(所得税率+10%)」となります。

対象者については、医療費控除と同様です。

独身世帯で年間12,000円以上の購入は中々ないと思いますが、3~4人家族なら知らず知らずのうちに該当する可能性もあります。

当然レシートがないと証明ができませんので、薬局をよく利用する方は薬局のレシートだけでも保管しておいた方が良いでしょう。

まとめ:医療費控除の対象者は所得額で決まる

医療費控除の対象者について解説していきましたが、いかがでしたでしょうか。

 本記事では、

  • 医療費控除の対象者
  • 控除額や還付金の計算方法
  • 医療費控除の対象になるもの
  • 医療費控除の確定申告の方法
  • セルフメディケーション税制とその対象者・控除額について

など、医療費控除の対象者だけではなく、実際の申告方法や医療費控除の特例に当たるセルフメディケーション税制まで、幅広く取り上げました。


 改めて冒頭の疑問にお答えすると、


「医療費控除の対象者かどうかはあなたの所得額で決まる。家族が対象者になるかどうかについては、生計を一にしていると認められれば同居・扶養の有無は関係なく医療費控除に含められる」


となります。


医療費控除は一見分かりにくいですが、基本を理解すれば難しくありません。


皆さんは国にも民間企業にも医療保険をたっぷり支払っているはず。

正しく申告し、たまには返してもらいましょう!