医療費控除の確定申告で診療明細書がない場合の対処法は?

医療費控除の確定申告で診療明細書がない場合の対処法は?
医療費控除の確定申告で診療明細書がない場合はどうすればよいのでしょうか。この記事では、医療費控除の確定申告で診療明細書がない場合の対処法を紹介しています。また、医療費控除の還付金の計算方法や医療費控除の申告方法も解説しているので、ぜひお読みください。
監修者「谷川 昌平」

監修者谷川 昌平ファイナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!

医療費控除の確定申告で診察明細書がない場合はどうする?


こんにちは。マネーキャリア編集部です。


先日、ある読者さまから、いかにも困ったというふうに次のような質問を受けました。

今年私の家では、医療費がかさんでしまって……医療費控除を申請しようと思っているんですけれど、困ったことに病院の明細書をなくしてしまって……どこにもないんです。こんなときどうすればいいんですか? 明細書がないと、医療費控除を受けられないんですか?

 2017年から医療費控除の申告において、「医療費の領収書の提出が不要に、代わりに医療費控除の明細書の添付が必要」というふうに制度が変わりました。 


ここで注意したいのは「医療費控除の明細書」≠「診療明細書」ということです。もともと診療明細書は、医療費控除の申告に添付する必要がありません。 


「医療費控除の明細書」と「診療明細書」が同じものを指すと誤解していらっしゃる方が多いようです。


とは言え、診療明細書がないと、最悪の場合どこの医療機関で誰がいくら治療費を払ったか分からなくなるケースが出てきます。 そうすると、医療費控除に必要な「医療費控除の明細書」が作成できなくなってしまいます。 


「診療明細書がない場合は、どうすればいいの?」 この記事では、そんな疑問に解説をしていきます。 まず「医療費控除の明細書」と「診療明細書」は、イコールでないことを頭に入れておいてください。


その上で、診療明細書がない場合の対処法を解説していきます。 さらに医療費控除の確定申告の際の還付金の額を、源泉徴収票にもとづいて計算する方法や、医療費控除の明細書の書き方を合わせて解説しています。 


今年の医療費について医療費控除を申告しようと思われている方は、役に立つ情報が載っていますので、ぜひ最後までお読みください。

医療費控除の確定申告で診察明細書がない場合の対処法5選!

結論から言うと、医療費控除の確定申告において診療明細書がなくても、特別困ることはありません。医療機関の領収書や健康保険の保険者から送られてくる「医療費のお知らせ」がその代用となる場合がほとんどだからです。


医療費控除の明細書にも別欄で、「医療費のお知らせ」の記載内容を書く欄があります。それ以外の医療費は、たとえば医療機関の領収書をもとに書くことができます。


医療機関の領収書は、医療費控除の確定申告の際は提出する必要はありません。しかし税務署から求められる場合もあるので、5年間の保管が必要です。


しかし「医療費のお知らせ」だけあって、明細書と医療機関の領収書が共にない場合、状況は少し厳しくなってくるでしょう。「医療費のお知らせ」に記載されていないその他の医療費があると、その金額が分からないからです。


以下の対処法の解説では、③~⑤がその場合に当たります。常に上手くいくとは限りませんが、対処法を解説しているので参考にしてください。

①医療費通知で代用する

2017年から健康保険の保険者から送られてくる「医療費通知(いわゆる医療費のお知らせ)」から医療費控除の明細書にかかった医療費の額を記載し、添付すればよいことになりました。


医療機関の診療明細書や領収書がない場合、この方法を利用しましょう。基本的に現在では、診療明細書や領収書の提出の必要はありません(領収書は5年間の保管が必要)。


ただ、「医療費のお知らせに」次の6項目すべてが記載されている必要があるとも言われています。

  1. 被保険者の氏名
  2. 療養を受けた年月
  3. 療養を受けた者
  4. 療養を受けた病院・診療所・薬局の名称
  5. 被保険者が支払った医療費の額
  6. 保険者等の名称

もしこのうちのどれかが記載されていない場合は、加筆・修正して提出しましょう。


また「医療費のお知らせ」に記載されていない医療費があれば、別に明細書へ記載しなければなりません。この場合は、医療機関の領収書等が必要になってきます。

②領収書で代用する

診療明細書がない場合ですが、診療明細書はもともと医療費控除申告の際に、添付する必要がありません。そのため病院や薬局の領収書があれば、それらを医療費控除の明細書に記載すればだいじょうぶです。


ただ、領収書については、5年間保管しておく必要があります。

③診療明細書や領収書の再発行を依頼する

診療明細書や領収書がない場合、たいていの人はその再発行を、と考えるかもしれません。


しかし病院や診療所において、基本的には「診療明細書や領収書の再発行はいたしません」と明記しているところがほとんどです。


そうはいっても、中には再発行を受け付けてくれる医療機関もわずかながらあるので、そうしたところにお願いするのも一つの方法です。

④支払い証明書の発行を依頼する

診療明細書や領収書がない場合、それに代わるものとして「支払い証明書」というものがあります。


大きな病院では、「領収額証明書」や「支払い証明書」の名前で、1年間分のかかった医療費の明細が記載された証明書を発行してくれるところもあります。


ただ、この場合は有料となります。


そのために医療費控除の還付額と比較して、戻って来る金額があまりに低くなってしまう場合はおすすめできません。

⑤家計簿やメモ等で確認する

診療明細書や領収書がない場合、この方法はさまざまな方法を試してみて、どれも上手くいかなかったときの最後の手段になるでしょう。


たとえば家計簿やメモ等で、

  • その医療機関名
  • 住所
  • 医師名
  • 支払金額
  • 支払い年月日

以上の明細を明らかにできるなら、医療費控除の明細書に記載し、確定申告の際に税務署に事情を説明して提出してみましょう。


可能かどうかは断言できませんが、控除額が大きいときは試してみる価値はあるでしょう。


他にも診察券やお薬手帳なども利用できる場合もあるそうですが、必ずしもだいじょうぶだと明言はできません。

医療費控除の確定申告を行うには源泉徴収票も必要!


医療費控除の確定申告をする場合、以下の書類が必要です。

  • 医療費控除の明細書
  • 確定申告書Aまたは確定申告書B
  • 源泉徴収票(会社員の場合)
  • 健康保険の医療費通知(「医療費のお知らせ」)

「医療費控除の明細書」については、その内容と記載のしかたを後述します。


「確定申告書A」は、申告する所得が給与所得や公的年金など・そのほかの雑所得・配当所得・一時所得のみで、予定納税額のない人が利用できます。会社員はこちらを使うことができます。 


「確定申告書B」は誰でも使用できるもので、自営業の人などが利用できます。


「医療費控除通知」は、健康保険の保険者から定期的に送られてくるいわゆる「医療費のお知らせ」という通知書です。たいていの場合、世帯単位で送付されることが多いようです。

源泉徴収票から医療費控除の還付金の額を計算しよう!


医療費控除の還付金の額を求めるのに源泉徴収票を使うのは、まず課税所得額(所得税の課税対象となる個人所得)を求めるためです。


課税所得額が算出できれば、所得税率を知ることができます。


医療費控除額と所得税率によって、還付金の額を計算することができます。


そのためには、源泉徴収票に記載されている「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除額の合計額」の意味と内容を知らなければなりません。


以下に詳しく解説していきます。

①課税所得を計算し所得税率を計算する

先ずお手元に医療費控除を行う年の源泉徴収票をご用意ください。


源泉徴収票の氏名の下の欄に、左から「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」とあります。これらの意味は分かりやすく言うと、次のようになります。

  • 支払金額=給与+賞与=年収
  • 給与所得控除後の金額=年収-給与所得控除額=所得(総所得金額等)
  • 所得控除額の合計額=「給与所得控除」以外の控除の合計額(健康保険料や厚生年金保険料、年末調整で控除される金額)

そして課税所得額は、次の計算式で求められます。

課税所得額=「給与所得控除後の金額」-「所得控除の額の合計額」

課税所得額が分かったら、所得額により税率は異なるので、国税庁ホームページで自分の所得税率を調べます。

②医療費控除額を計算する

医療費控除額を求める計算式は、次の通りです。

医療費控除額=(1年間で支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされた金額)-10万円(または総所得金額×5%)

※総所得金額が200万円未満の方は、「総所得金額×5%」を差し引く 

※医療費控除額の上限は200万円

③医療費控除額・所得税率・住民税率から還付金の額を計算する

所得税の場合、年末調整で納税が済んでいる人は、医療費控除で安くなった分だけ税額が還付されます。


ただし、住民税については翌年6月以降に納めるため、所得税のように還付されることはありません。医療費控除で安くなった後の税額を6月以降に納めることになります。


総所得金額にかかる住民税の税率は10%(都道府県民税・市区町村民税の合計)であることから、医療費控除額の10%に当たる金額だけ住民税が安くなります。


したがって医療費控除の還付金の額(住民税が安くなる分を含む)を求める計算式は、以下のようになります。

(医療費控除額×所得税率)+(医療費控除額×10%)



医療費控除の確定申告は行う方法は主に2種類!

医療費控除の確定申告を行う方法は、主に以下の2種類があります。

  1. e-Taxを利用して、国税庁のホームページから確定申告を行う方法。
  2. もう一つの方法は、やはり国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」から、画面の指示にしたがって医療費控除の明細書・確定申告書を作成し、プリンターで印刷する方法。

1の方法は、すべての手続きがオンライン上で行われるので、自宅や事務所で入力が可能で、かつ処理が迅速です。


また申告を通常より早期に行える利点があり、通常の書類添付が不必要になる場合があります。


パソコン操作が苦手でない方は、ぜひおすすめです。


2の方法も、やはりパソコン上の画面で行うことになります。


しかし、どうしてもパソコンが苦手で、手書きがいいという方は、従来通り所轄税務署に行き、確定申告書と医療費控除の明細書を交付してもらう方法になります。


以下に詳しくそれぞれの方法について、解説していきます。

①e-Taxを用いて医療費控除の電子申告を行う

e-Taxを用いて、電子申告を行うと以下のような利点があります。

自宅からネットで申告

パソコンの画面上から入力することにより、自宅や事務所にいながら確定申告書を作成することができます。またインターネットを利用して、データを送信するため処理が迅速です。 

添付書類の提出省略

 生命保険料控除の証明書やマイナンバーに関する本人確認書類などは、その記載内容を入力して送信することにより、提出または提示の必要がありません。 

還付がスピーディー

還付申告は1月のうちに申告することができます。また電子申告のため、提出された還付申告は3週間程度で処理されます。

24時間受付

令和3年1月4日(月)から4月15日(木)は、24時間e-Taxの利用が可能。

令和3年4月16日(金)からは、月曜日から金曜日は24時間利用が可能。

なお、毎月の最終土曜日及び翌日の日曜日については、8時30分から24時まで利用が可能(休祝日及び12月29日から1月3日を除きます。)。

 

詳しくは、e-Taxホームページをご覧ください。

②必要書類を所轄税務署に郵送する

医療費控除の明細書のみを作成する方は、国税庁ホームページから「医療費控除の明細書様式」をクリックすると明細書の書式用紙をダウンロードできます。Excel版を選択すれば、金額を入力するだけで自動計算が行われるので便利です。


確定申告から行う方は、国税庁 確定申告書作成コーナーにて、「医療費控除の明細書」のほか、「確定申告書」等も作成することができます。医療費控除の明細書の内容が自動で確定申告書に反映されます(画面右上の「医療費集計フォーム」をクリックして、指示に従ってください)。


確定申告書の作成は画面「作成開始」をクリックし、「印刷して提出」を選択すれば、申告書を作成してプリントアウトすることができます。そしてその他必要書類を添付して、所轄税務署に郵送すれば完了です。

医療費控除の明細書の書き方を解説!


医療費控除の明細書を作成する場合は、上述したように国税庁のホームページから、明細書のExcel版書式用紙をダウンロードしてください。必要欄に金額等を入力すれば、自動計算され、プリンターで印刷することができます。


どうしてもパソコン等の画面で入力するのは苦手で、手書きの方がいいという方は、ホームページの同じ場所で「医療費控除の明細書様式」(PDF版)をダウンロードしてください。そして印刷すれば、税務署で交付される書式用紙と同じ用紙が手に入ります。


医療費控除の明細書の細かい記載方法は、以下で解説していきます。

①治療を受けた人ごとに領収書を分ける

まず医療機関などの領収書を、家族で治療を受けた人ごとに分けて集めます。


健康保険の保険者から送られてきている「医療費のお知らせ」がある場合は、それを明細書記入時に利用します。



②医療機関ごとに領収書を分ける

かかった治療費の領収書を世帯の各人ごとに整理したあとは、さらにこれをかかった医療機関別に分けてまとめます。


これで、医療費控除の明細書に記入する準備が整ったことになります。

③医療機関ごとにまとめて記入する

「医療費のお知らせ」がある場合は、通知の記載内容をもとに、明細書の「1 医療費通知に関する事項」の記入欄に医療費の額を記入します。治療に際して、健康保険や民間の医療保険等から医療費の補てんを受けている場合は、その金額を記載します。


保険の給付金の差引額については、国税庁のホームページ「3 医療費控除の対象となる金額」の「(1) 保険金などで補てんされる金額」を参照してください。


それ以外で申請する医療費については、「2医療費の明細」に医療を受けた人・医療機関ごとに記入していきます。


この場合、治療費ごとの金額ではなく、医療機関に支払った合計額で構いません。またここでも受け取った保険等がある場合は、その金額を記載します。


医療費の明細欄の下に、控除額の計算を記入する部分があります。各項目にA~Gのアルファベットが振られていて、その順番に記入すると控除額が計算できる仕組みになっています。

まとめ:医療費控除の申告で診療明細書がない場合の対処法を知ろう

いかがでしたでしょうか?


この記事では、

  • 「医療費控除の明細書」≠「診療明細書」である。
  • 診療明細書、または医療機関の領収書がない場合は、5つの対処法がある。
  • 医療費控除の確定申告には、源泉徴収票が必要。
  • 源泉徴収票のそれぞれの項目の見方、またそれらにより医療費控除の還付金額を計算する方法。
  • 医療費控除の確定申告をする方法。特にe-Taxがおすすめ。
  • 医療費控除の明細書の書き方。

以上を解説してきました。


たとえ診療明細書がないとしても、特にあわてる必要がないことが理解いただけたと思います。


ただ診療明細書や医療機関の領収書、および「医療費のお知らせ」が同時にない場合(めったにないでしょうが)は、少し厳しいとは思いますが、そのときの対処法も解説していますので、参考になさってください。


また確定申告の方法も現在では進歩して、e-Taxにより自宅や事務所にいながら、しかも簡単にスピーディーに行えるようになりました。パソコンやインターネットのスキルをお持ちの方はぜひお試しください。


さらに医療費控除の明細書についても解説していますので、この記事を読んで、皆さまが滞りなく医療費控除の確定申告ができるなら幸いです。