医療費を自己負担した場合の払い戻しの仕組みは?

医療費を自己負担した場合の払い戻しの仕組みは?
監修者「谷川 昌平」

監修者谷川 昌平ファイナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!

(高額)医療費を自己負担した場合の払い戻しの仕組みは?

病院に行ったけど保険証を忘れたことや、急に大きな怪我や病気になってしまって金銭面で不安になった経験はないでしょうか? 


日本では、医療費は現在3割負担となっており、私たちは窓口で本来かかっている医療費の3割しか払わずに済んでいます。


そのおかげで病院へ行く際も保険証を提示すれば、安く診察や治療が受けることができます。


冒頭に述べた通り、保険証を忘れた場合や、大きな怪我や病気にかかってしまった場合は、通常より多額の医療費を払わなければいけないことがあります。


しかし、そんな時は医療費の払い戻しが受けられることをご存知でしょうか?


今回は医療費の払い戻しについて

  • 療養費の払い戻しが受けられるケース、受けられないケースとは?
  • 保険証を忘れた場合は返金される?
  • 高額医療費はいくらから受け取れる?
  • 高額医療費の申請方法は?

以上の内容を中心に解説していきます。


保険証を忘れた経験のある方や、多額の医療費を払っている方は、この記事を読んで申請を行えば、医療費が払い戻しを受けられるかもしれません。


ぜひ最後まで読んで医療費の払い戻しが受けられるかどうかチェックしてみてくださいね。  

療養費の払い戻しが受けられるケース・受けられないケース


医療費を全額負担した場合には療養費として払い戻しを受けることができます。

健康保険では医療機関の窓口で保険証を提示して診療を受ける現物給付が原則です。

医療費の3割は自己負担ですが、残りの7割は保険者が医療機関に支払います。
保険加入者に医療サービスという現物を給付するので、現物給付と言います。

この現物給付が受けられない時、治療のために何らかの装具が必要な時は、 後ほど払い戻しの申請ができるというわけです。

被保険者や被扶養者が医療機関で診療を受けた場合を基準に計算した金額、また、実際の支払額が保険診療基準の金額より少ない時は、実際に支払った金額から、一部負担金相当額を差し引いた額が払い戻しされます。

この時、健康保険で認められない費用は除外されます。
また、全額返金されるわけではなく、全てのケースで払い戻しが受けられるわけではありません。

療養費が受けられるケース(払い戻しされるケース)と療養費が受けられないケース(払い戻しされないケース)をそれぞれ見ていきましょう。 

療養費が受けられるケース


以下の場合は療養費を受け取ることができます。

  • やむを得ず保険医療機関でない病院で診療を受けた時
  • 柔道整復師から施術(急性の外傷性の骨折など)を受けた時
  • 保険証を提示できず自費で診療を受けた時
  • 治療用装具を医師の指示で作り装着した時
  • 臍帯血を搬送した時
  • 生血液の輸血を受けた時
  • 海外の医療機関で診療を受けた時
  • はりきゅうマッサージの治療を医師の同意の元受けた時

「海外の医療機関で診療を受けた時」であっても、治療を目的に海外に出向いた場合は対象外です。 

療養費が受けられないケース

以下の場合は療養費を受け取ることができません。

  • 日常生活からくる単なる疲労肩こりなど、柔道整復師で健康保険が使えない時
  • スポーツによる筋肉疲労、筋肉痛 

国保の保険証を忘れて医療費を自己負担した場合、医療費返金のしくみは?


保険証忘れて医療費の全額を支払った時は、申請して審査で認められれば、自己負担部分を除いた額は療養費として払い戻しが受けられます。


申請の手続きには、以下の書類が必要です。

  • 印判
  • 領収書
  • 国民健康保険被保険者証
  • 診療報酬請求明細書(レセプト)
  • 振込口座が確認できるもの
以上の書類を用意し、療養費支給申請の手続きを行いましょう。

高額医療費はいくらから受け取れる?自己負担限度額


窓口負担が自己負担限度額を超えた場合、超えた分の払い戻しを受けられるのが高額療養費制度

年齢や収入によって、自己負担限度額は変わるので、後ほど詳細を掲載しますが
例えば、30歳で月給25万円の方であれば57600円が上限額となります。

高額療養費制度は、以下のいずれの場合でも受けることができます。
  • 単独(1人)
  • 世帯合算
  • 多数該当
単独で受ける場合は、1人の1ヶ月の窓口負担額が自己負担限度額を超えた場合、超えた分の金額が払い戻されます。

世帯合算と言って、自己負担額は世帯で合算することもできます。
複数人が同じ病気・けが・入院で、医療機関で受診した場合、他の医療機関で入院と外来で受診した場合、自己負担額は世帯で合算することができます。
合算した金額が自己負担限度額を超えた場合、超えた金額が払い戻されます。

注意点として、世帯合算をする場合、同じ保険に加入している必要があります。
例えば、父親は会社の健康保険、母親と娘は国民健康保険に加入している場合、父親は母親・娘と合算することができません。

また、合算額に関して、それぞれが各医療機関で自己負担額21,000円以上支払った時に合算可能です

「世帯合算」と聞くと使い勝手が良いように思えますが、意外と制約が厳しいので注意しましょう。

多数該当とは、直近12ヶ月で3回以上自己負担限度額を超えていると、4回目からは多数該当として自己負担額がさらに軽減される制度のことです。
「過去12ヶ月で3回」超えていればいいので、3ヶ月連続している必要はありません。

高額療養費制度を利用するときの注意点としては、医療費の計算は月単位であることが挙げられます。
月単位とは、各月の1日から末日までを指します。

例えば、6月5日から7月15日の合計の入院費が限度額を超過していたとします。
しかし、各月の入院費が限度額を超えていなければ、高額療養費の対象からは外れてしまいます。
月をまたいでの合算はできないので注意しましょう。
治療開始日や入院開始日の調整ができるようであれば、検討してみるのも手です。

70歳未満


ここからは、自己負担限度額について見ていきます。


まずは、70歳未満の方。

7多くの方がこの表のいずれかに当てはまるでしょう。

所得区分 自己負担限度額  多数該当
標準報酬月額83万円以上の方
報酬月額81万円以上の方
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%140,100円
標準報酬月額53万〜79万円の方
報酬月額51万5千円以上〜81万円未満の方
167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1%93,000円
標準報酬月額28万〜50万円の方
報酬月額27万円以上〜51万5千円未満の方
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1%44,400円
標準報酬月額26万円以下の方
報酬月額27万円未満の方
57,600円44,400円
被保険者が市区町村民税の
非課税者等
35,400円24,600円


70歳~74歳(平成29年7月まで)


被保険者の所得区分自己負担限度額
(個人)
自己負担限度額
(世帯)
現役並み所得者44,400円80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
(多数該当:44,400円)
 一般所得者12,000円44,400円
市区町村民税の非課税者等8,000円24,600円
所得がない8,000円15,000円

「現役並み所得者」は、標準報酬月額28万円以上で、高齢受給者証の負担割合が3割の方が当てはまります。


「一般所得者」については、「現役並み所得者」「市区町村民税の非課税者等」「所得がない」以外の方が対象です。


被保険者の所得区分の「所得がない」場合は、被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後、所得がない場合を指します。

70歳~74歳(平成30年7月まで)

平成30年7月までは、70歳~74歳の方は以下の通りです。

被保険者の所得区分自己負担限度額
(個人)
自己負担限度額
(世帯)
現役並み所得者57,600円80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
(多数該当:44,400円)
一般所得者14,000円
(年間上限14.4万円)
57,600円
(多数該当:44,400円)
市区町村民税の非課税者等8,000円24,600円
所得がない8,000円15,000円


70歳~74歳(平成30年8月から)


平成30年8月から、70歳~74歳は以下の通りです。

被保険者の所得区分自己負担限度額
(個人)
自己負担限度額
(世帯)
現役並みⅢ
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
(多数該当:140,100円)
左記(個人)の場合と同様
現役並みⅡ
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
(多数該当:93,000円)
左記(個人)の場合と同様
現役並みⅠ
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
(多数該当:44,400円)
左記(個人)の場合と同様
一般所得者18,000円
(年間上限14.4万円)
57,600円
(多数該当:44,400円)
市区町村民税の非課税者等8,000円24,600円
所得がない8,000円15,000円

「現役並み」の方については、それぞれ以下の方が当てはまります。

  • 現役並みⅢ:標準報酬月額83万円以上で 高齢受給者証の負担割合が3割の方
  • 現役並みⅡ:標準報酬月額53万〜79万円で 高齢受給者証の負担割合が3割の方
  • 現役並みⅠ:標準報酬月額28万〜50万円で高齢受給者証の負担割合が3割の方

高額医療費の申請はいつどこでするの?還付金の手続きについて


高額医療費については、支給まで3ヶ月以上かかります。
加入している医療保険の窓口に問い合わせてみてください。
  1. 医療費の支払い(自己負担分)
  2. 申請書類を入手、必要事項を記入
  3. 医療保険窓口で手続き、書類提出
  4. 自己負担分と自己負担限度額の差額の払い戻し
申請が適用される期間としては、2年前までです。
2年以内であれば、遡って医療費の支払いを申請できます。

医療費が高額になることが分かっている場合には、限度額適用認定証を医療機関に提出しましょう。

事前に限度額認定証を病院に提出しておけば自己負担限度額までの支払いでOKです。

高額医療費制度でお金が戻ってくるとはいえ、一時的に自分で高額の医療費を負担するのが厳しい...という場合には非常にありがたい制度です。

突発的な病気や怪我や手術の場合は事前に申請は困難かもしれませんが、医療費が高額になると予想される場合は、先に認定証を受け取りましょう。

申請方法については市役所や、加入している健康保険組合に確認してください。 

①医療費の支払い(自己負担分)


医療機関で自己負担分の医療費を支払います。
限度額適用認定証を発行している場合には、ここで多額の医療費を支払わずに済みます。

入院中の食費・居住費・差額ベット代・先進医療にかかる費用に関しては、高額療養費の対象とはならないので注意しましょう。

②申請書類を入手、必要事項を記入


高額療養費支給申請書を提出します。

また、添付する書類は場合によって異なりますが、主に以下が挙げられます。 

  • 怪我の場合「負傷原因届」
  • 第三者による傷病の場合「第三者行為による傷病届」
  • 公的制度から医療費の助成を受け窓口負担が軽減されている場合:助成を受けた診療についての医療機関からの領収書のコピー
  • 被保険者が亡くなり相続人が請求する場合:被保険者との続柄がわかる戸籍謄本など
自己負担限度額の所得区分が低所得者になる場合、平成29年8月以降の申請、平成29年7月以前の申請の場合で異なります。

平成29年8月以降の場合は貼付台紙兼マイナンバー情報連携提出書、マイナンバーの情報連携を希望しない方であれば、被保険者の住民税の(非)課税証明書が必要です。

平成29年7月以前の申請では被保険者の住民税の(非)課税証明書が必要になります。

上記以外にも、場合によっては必要になる書類が出てくる場合があります。 

自己負担額については、医療機関ごとに計算します。

同じ医療機関でも、医科入院・医科外来・歯科入院・歯科外来に分けて計算する必要があります。

医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合は、 薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します。

③医療保険窓口で手続き、書類提出


加入している保険によって申請方法や提出書類が異なります。
それぞれ加入している保険に確認してみましょう。

④自己負担分と自己負担限度額の差額の払い戻し


申請書類の提出からおよそ3ヶ月後、支払い済みの自己負担した医療費と、自己負担限度額との差額である高額医療費が払い戻しされます。

医療機関から提出される診療報酬明細書の確認が必要なため、時間がかかります。
早めに申請しておきましょう。

高額医療費貸付制度

額療養費が支給されるまでの間、高額療養費支給見込み額の8割相当額を無利子で貸し付けを行う高額医療費貸付制度があります。

高額医療費貸付制度の申込は、加入している保険によって異なります。
国民健康保険では以下の通り、手続きを行います。
  1. 貸付申請書類の交付
  2. 医療機関等への医療費(自己負担限度額)の支払い
  3. 申請書類の提出
1.貸付申請書類の交付
医療機関等の承諾を得た後、保険証を持参の上、住所地の役所(出張所)保険年金担当課へ出向き、窓口にて申請書類を受け取ります。

2.医療機関等への医療費(自己負担限度額)の支払い
医療機関等で申請書類に必要事項を記入してもらい、自己負担限度額までの一部負担金を医療機関等へ支払います。
ただし、食事代や保険診療の対象とならないものは別途負担する必要があります。

3.申請書類の提出
保険証、貸付申請書類、領収書および印鑑を持参し、住所地の役所(出張所)保険年金担当課へ申請書を提出します。
これで貸付申請手続きは完了です。

高額療養費受領委任払制度

本来は高額療養費として後日払い戻される金額を、公的医療保険から直接医療機関に支払う制度です。

高額療養費受領委任払制度を利用することで、窓口での支払い分については、自己負担限度額までとなり負担が軽減されます。

必要な方は、高額医療費貸付制度や高額療養費受領委任払制度を利用してみましょう。
ただ、加入している保険によっては、制度が存在していないこともあるので、確認してみてください。

まとめ:高額医療費を自己負担した場合の払い戻しの仕組みは?


今回は、高額医療費について
  • 療養費の払い戻しができるケースとできないケースの違い
  • 保険証を忘れた場合でも返金される
  • 高額医療費は年齢や収入によって受け取れる金額が異なる
  • 高額医療費の申請は書類を書いて医療保険の窓口で提出
  • 高額医療費貸付制度、高額療養費受領委任払制度について

以上の内容を中心にお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか?


全国健康保険協会によると高額療養費の認知度は68.9%との調査結果があります。

限度額適用認定証については認知度が35.6%です。


3割以上の人が高額療養費制度の存在を知らず、6割の人は限度額適用認定証を知らないということですね。

今回の内容は、特に知っているか知らないかで明暗を分ける内容だったかと思います。


また、今回の記事で高額医療費の制度を知った方は「今加入している保険は本当に必要なのか?」を改めて考え直すきっかけになったかと思います。

高額療養費制度には制約も多いため、必要な方は医療保険の契約内容を確認し、うまく併用すればいざという時でも安心できるでしょう。


世界でもトップクラスの医療費制度が整っている日本。

ぜひ今回ご紹介した各制度をうまく活用してみてくださいね。


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