がんの医療費が払えない場合はどうする?抗がん剤治療の自己負担額は?

がんの医療費が払えない場合はどうする?抗がん剤治療の自己負担額は?
監修者「谷川 昌平」

監修者谷川 昌平ファイナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!

抗がん剤の治療費など、がんの医療費が払えないときはどうする?

こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、70代男性からこんな質問をいただきました。


今現在がんを患っていているのですが、医療費が高すぎて戦慄してしまいました。

がんの医療費を払えない場合、どうしたらいいですか。


高額な医療費は、それだけで家計の大きな負担となってしまいます。


そんな額を払えないと思う方もいるかもしれません。


そんな方に利用をおすすめしたいのが、がんの医療費を支援してくれる公的制度です。


この記事では、公的制度の紹介を中心に、

  • 公的制度にはどんなものがある?払えない人ならだれでも利用できる?
  • それでも高額ながんの医療費を払えない場合にはどういたらいい?
  • がんの治療にかかるお金はどれくらいかかる?
について説明したいと思います。

がんの医療費が高額になったときに使える公的制度一覧



先ほどもお伝えしたように、公的制度を利用すれば、がんの医療費を安く抑えることができます。


もちろん、それには条件がありますので、誰でも利用できるというわけではありません


しかし、もし利用できれば、高額な医療費を払えないとい人には非常に助かる制度ですので、一度検討してみてはいかがでしょうか。


具体的に公的制度は、

  • 高額医療費制度(限度額適用認定証)
  • 高額医療・ 高額介護合算療養費制度
  • 医療費控除
  • 傷病手当金
  • 障害年金
  • 障害手当金
などがあります。

このうち、医療費が高額になったときに利用できる制度が、
  • 高額医療費制度(限度額適用認定証)
  • 高額医療・ 高額介護合算療養費制度
  • 医療費控除
の3つです。

これは高額な医療費を提示されて、払えないという場合に効果的な制度です。

それに対して、収入が不安になったときに利用できる制度が、
  • 傷病手当金
  • 障害年金
  • 障害手当金
の3つです。

これは収入が十分でなく、医療費を払えないという場合に効果的な制度です。

これらの制度の説明や条件を、以下の表にまとめたので参考にしてください。

名称説明条件
高額療養費制度医療費の家計負担が重くならないよう、自己負担限度額を超えた場合、
その超えた額を給付するもの。
  • 1か月に支払う医療費が自己負担限度額を超えたとき
  • 同じ医療機関で21,000円以上
  • 70 歳未満は、医科と歯科、入院と外来は分けて計算する
高額医療・
 高額介護合算療養費制度
1年間の医療保険と
介護保険の自己負担の合算額が著しく高額になる場合に、負担を軽減するもの。
  • 1年間に医療保険と介護保険の両方の自己負担があるとき
  • 国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度の各医療保険における世帯内であること
医療費控除自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために
医療費を支払った場合に受けることができる、一定の金額の所得控除のこと
  • 医療費が年間10万円以上
  • 合算できるのは「生計を一にしている」場合のみ
  • 治療を目的とした医療費のみ
傷病手当金病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度
  • 業務外で発生した病気やケガが理由で会社を休む場合
  • 仕事ができないと判断された場合
  • 3日連続で休んだ場合
  • 休業した期間は無給であったこと
障害年金病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった時に受け取れる制度
  • 障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるとき
  • 特定の期間について、保険料が納付または免除されていること
障害手当金障害年金の対象にならない軽度の障害が残った場合、一度だけ支給されるもの
  • 初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったとき

次からはそれぞれの制度について、詳しく解説してきますのでご覧ください。

高額医療費制度(限度額適用認定証)

全国健康保険協会の公式ホームページでは、「高額療養費制度」について、

  • 同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、 一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度
としています。

簡単に言えば、一か月間に医療費を払いすぎた場合に、その分を給付してくれるという制度です。

ただし、一つの医療機関における自己負担額を勘定するものなので、複数の医療機関の自己負担額を合算することはできません

そのため、複数の医療機関をたらいまわしにされた結果、医療費が払えないとなっても、利用できないのです。

所得や年齢による差があり、所得の高い人や70歳以上の高齢者ほど、自己負担額が増得する傾向にあります。

逆に所得の低く70歳に満たない人の場合には、自己負担額が少額で済む傾向にあります。

なお、保険適用外の費用については対象外なので注意が必要です。

高額医療・ 高額介護合算療養費制度

同じく、全国健康保険協会の公式ホームページでは、「高額医療・ 高額介護合算療養費制度」について、

  • 世帯内の同一の医療保険の加入者の方について、毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額(高額療養費及び高額介護(予防)サービス費の支給を受けることができる場合には、その額を除く。)を合計し、次の基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給します
としています。

簡単に言えば、1年間に医療費介護費を支払いすぎた場合に、ある程度減額してくれるという制度です。

医療保険と介護保険の両方を利用している必要があり、医療保険の超過分に関しては、「高額医療合算介護サービス費」として支給され、介護保険の超過分に関しては、「高額介護合算療養費」として支給されます。

収入が高い・年齢が若い人ほど、自己負担額が高額になっており、逆に低所得者や高齢者は、自己負担額が少額で済みます。

満足に払えない人にやさしい制度となっています。

医療費控除

国税庁の公式ホームページでは、「医療費控除」について、

  • 医療費控除とは、所得税や住民税の算定において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために医療費を支払った場合に受けることができる、一定の金額の所得控除のこと
としています。

簡単に言えば、一年間に医療費を支払いすぎた場合に、その金額に応じて所得控除を受けることができる制度です。

医療費控除は、1年間で10万円以上の医療費を支払った場合に申告できます。

普段は確定申告の必要のない人でも、医療費控除に関しては自分で申告する必要があります。

申告の期限は特に定められておらず、さらに5年前までさかのぼって申告することができます。

申告が認められれば、まず一定額の所得控除を受けられます。

さらに医療費額に応じて還付金を受け取れます。

なお、基本的に所得の多い方が申告するほうがより効果があります。

傷病手当金

全国健康保険協会の公式ホームページでは、「傷病手当金」について

  • 傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、 被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます
としています。

業務外で発生した病気やケガが対象で、業務内で発生したものは労災保険制度が別で適用されます。

つまり、仕事と関係のないところで起きたことでも、健康保険に加入していれば保険金が受給できるのです。

3日連続して休むことが条件となっていますが、この期間に公休や有休を含んでも構いません。

ただ、無給期間にのみ手当金が支給されるので、有休休暇を利用すれば受給できません。

なお、支給開始した日から最長1年6ヵ月までと定められています。

障害年金

日本年金機構の公式ホームページでは、「障害年金」について、

  • 病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金
としています。

「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2種類があり、国民年金に加入して入れば「障害基礎年金」が、厚生年金に加入していれば「障害厚生年金」が給付されます。

これらは重ね掛けが可能です。

例えば、厚生年金に加入していて、障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。

なお、障害基礎年金・障害厚生年金(障害等級1級・2級に限る)を受ける場合は、国民年金保険料が免除されます。

障害手当金

同じく、日本年金機構の公式ホームページでは、「障害手当金」について、

  • 厚生年金に加入しいて、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害(具体的には、障害年金に定められた3級未満の障害)が残ったときに支給されるもの
としています。

厚生年金に加入していることが条件で、障害厚生年金の対象となる障害レベルよりも低い程度の場合に支給されます。

この障害手当金は申請するタイミングが特殊です。

実はこの手当金は、病気やケガが5年以内に治ったタイミングで申告できます。(5年以上の場合には申請できない)

通常の公的制度とは異なり、病気やケガが治ったタイミングでようやく申請できる制度となっているのです。

特殊な申請方法ですので間違わないようにしましょう。

それでも高額ながんの医療費を払えない場合



以上の公的制度を利用すれば、高額な医療費であっても支払えるようになります。


ただ、制度が利用できなかったり、利用しても支払えないという人は、

  • 病院に分割払いの相談をする
  • クレジットカードのキャッシング枠やカードローンを利用
などの方法も利用してみてはいかがでしょうか。

これらの方法は生計が苦しい人でも、一度に支払う金額を少額に抑えることができる方法です。

もちろん審査が厳しかったり、手数料がかかったりしてしまうため、できるなら通常の方法を選択するべきです。

しかし、まとまった額を払えないとい人にとっては、非常に助かる制度ですので一度検討してみてはいかがでしょうか。

病院に分割払いの相談をする

病院に入院すれば、毎日入院費がかかってしまいます。


手術代だけでなく、入院費も支払うとなると、その分のお金まで払えないとい人も出てくるかもしれまません。


その時には、病院に分割払いの相談をしてみるとよいでしょう。


場合によっては、入院費だけが分割払いできたり、支払いを先延ばししてくれたりする可能性があります。


なお、クレジットカードによる分割払いと異なり、この方法では直接分割払いをするので利息が発生しないというメリットがあります。


デメリットとしては、分割払いを了承してもらえる可能性が低いということです。


しかし、もし分割払いができるなら、一度に払えなくても・すぐに払えなくてもいいので、非常に助かりますよね。


病院に相談窓口が付属していることもあるので、しっかり相談して分割払いできないかの提案をしてみましょう。

クレジットカードのキャッシング枠やカードローンを利用

病院の支払い方法というと、現金が主流ですが、クレジットカードに対応している病院もあります。


もしクレジットカードが利用できるなら、後払いや分割払いも選べるので非常に便利ですね。


さらに、キャッシング機能を使えば、医療費以外の日常生活に必要なものの購入資金もカバーできます。


このように、クレジットカードを利用すれば、高額な医療費であっても支払うことが可能になるのです。


また、カードローンを利用する方法もあります。


特に医療費の支払いには「医療ローン」の利用がおすすめです。


「医療ローン」とは、病院が提示する信販会社の提携ローンとは別で、銀行が出しているものです。


このローンは対象範囲が広く、通常の提携ローンで組めないローンでも組めます。


ただ、審査が厳しかったり、融資が開始されるまで時間がかかったりとデメリットも多くあります。


自分に適した支払方法を選択するようにしましょう。

がんの治療にかかるお金!抗がん剤の治療費、自己負担額の平均は?



ここまでは高額な医療費を支払う方法について紹介してきました。


ここからは、がんの治療に焦点を当ててみていきたいと思います。


順序としては、

  • がんの治療にかかるお金の内訳
  • 健康保険が適用される治療・されない治療
  • 実際の自己負担額
の順に紹介します。

最後にシミュレーションとして、実際の自己負担額を紹介しているので、ある程度の目安を付けることができます。

自分ががんを患った時の参考になると思いますので、ぜひ最後までお読みください。

がんの治療にかかるお金の内訳

がんの治療にかかる金額の内訳は、「直接治療にかかるお金」と「その他のお金」に分けることができます。


直接治療にかかるお金とは、具体的に、

  • 血液検査
  • 診察費用
  • 手術費用
  • 薬代
などがあります。

その他のお金とは、具体的に、
  • 通院の交通費
  • 入院時の日用品
  • 食事代
などがあります。

金額の大きさから、直接治療にかかるお金の方に目が行きがちですが、その他のお金も意外とかかってしまうので、払えない状況に追い込まれることもあります。

病院で提示された金額よりも多めにお金を用意しておくとよいでしょう。

健康保険が適用される治療・されない治療

健康保険が適用されるものものは「治療」を目的としています


一般的に「医療費」と思われているものが対象です。


保険が適用されるなら、自己負担額が少なくて済むので、払えないということも少なくなるでしょう。


それに対して、適用されないものは、「治療」と関係のない行為や出費などがあります。


例えば、

  • 入院時の食事代
  • 入院したことによってかかる雑費や日用品代
  • 差額ベッド代
  • 自由診療
  • 高度先進医療費
  • 家族の見舞いの交通費

などは保険適用外となります。


特に自由診療には、出産やレーシックなどがあり、保険適用外の中でも身近な治療です。


ところが保険適用外ということで想定外の出費がかさんで、払えないということになってしまうかもしれません。


保険が適用されるかどうか悩んだ際には、一度病院で相談してみるのが確実です。

実際の自己負担額

ではここで実際に、健康保険あるいは公的制度を利用すれば、自己負担額がどれくらいになるのかをシミュレーションしたいと思います。


なお、シミュレーションの条件は、

  • 50代男性
  • 収入は700万円
  • がんの分類は「胃の悪性新生物」
  • 入院費の総額は70万円(医療費が60万円、保険適用外の総額が10万円)
  • 医療費の負担割合は3割
とします。

実際の自己負担額

まず、自己負担額がいくらになるのかを計算します。

負担割合は3割なので、

60×0.3=18万円

となります。

それに保険適用外の10万円を加えて、合計28万円が実際の自己負担額となります。

次に、公的制度を利用して、この28万円をより安くしてみたいと思います。

今回は、「高額療養費制度」を利用します。

収入は700万円なので、月収は58万円となります。

そうすると、「高額療養費の区分イ」にあたるため、自己負担額は、
  • 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
という計算方法で求められます。

上のシミュレーションに当てはめると、
  • 167,400円+(60万円-558,000円)×1%=167,820円
となります。

これは「高額療養費制度を利用したときの自己負担額(「ア」とします)」です。

「健康保険を利用したときの自己負担額」から「ア」を引けば、高額医療費制度で払い戻される金額を求められます。

18万円ー167,820円=2,180円

となり、2,180円が払い戻されることが分かりました。

この結果から、高額療養費制度を利用しても、そこまで効果がないという結論に達しました。

ただし、がんの進行状況によっては、医療費だけで数百万を要することになります。

その際に、高額療養費制度を利用すればかなり効果的なので覚えておくとよいでしょう。

まとめ:がんの医療費が払えない場合はどうする?

ここまでは、高額な医療費が支払えない場合にどうするのかと、がんの医療費の概要についてみてきました。


この記事のポイントは、

  • がんの医療費が高額になったときに使えるのは、「高額療養費制度(限度額適用認定証)」「高額医療・ 高額介護合算療養費制度」「医療費控除」「傷病手当金」 障害年金」「障害手当金」の6種
  • まとまった額を払えないなら、入院費の分割払いやクレジットカードの利用もおすすめ
  • がんの医療費には、保険適用されるものやされないものもある
  • 公的制度を利用してもあまり効果がないこともある
でした。

がんだけに関わらず、医療費は少額であっても年間で見ると大きな出費となるものです。

できるなら少しでも出費を抑えたいものですよね。

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